Musicology: The Key Concepts (Routledge) から。 MARXISM マルクス主義というのは主にカール・マルクスとその共著者フリードリヒ・エンゲルスの著作に関するものだが、こういった著作を解釈し確固としたものにしようとするのちの試みもまた含まれる。その関心と影響の中心的な領域は経済と政治だけれども、マルクス主義には社会的・哲学的な側面もある。マルクスが強調しようと試みたのは、資本主義を検証することによって社会の経済的な基礎と、はっきりと社会的・経済的に規定された階級に抵抗・挑戦する意志である。マルクスにとって、社会とは経済的な基礎によって規定されるものだった。このことは、下層階級プロレタリアートの抑圧と搾取に基づいた社会・政治の関係を決定した。しかしながら、マルクスはこの階級を潜在的な力とみなした。それは革命的な政治的文脈の中で開放されうる。1848年のヨーロッパ中で起こった革命的な大変動はこの時期のマルクスの著作に劇的な文脈をもたらした。その年、彼の『共産党宣言』はふたつの極がひたすら負かし合ってきたという歴史観を呈した。 これまで社会に存在した歴史というのはすべて階級闘争の歴史であります。自由人と奴隷、貴族と平民、君主と農奴、親方と徒弟、ひとことで言えば、抑圧する者とされる者はコンスタントに取っ替え引っ替えを繰り広げてきたのです。邪魔されずに、時に隠れ、時に公然と戦いを続けてきました。それぞれの時代を、革命による社会の大規模な再構築か、戦っている階級の共倒れかのどちらかで終わらせてきた戦いを。(マルクス=エンゲルス 1998, 34-35) この歴史観が現在におけるマルクス理解を決定づけた。それはまたヘーゲル哲学の意識や弁証法的思考のあり方にも影響を与えた。マルクスはこれらの抵抗と敵対をテーゼとアンチテーゼの瞬間として、衝突をもたらす対照的な極として見た。そして、ここから新しい革命的な瞬間が生じようとしていた。しかしながら、たいていの議論はこのような行動や出来事の不可避性の問題と密接に関係してきた。 マルクスの著作が社会との関係の中で文化を理解することと大きく関係しているにもかかわらず、彼は芸術と文化の位置づけに関して、充分に発展させた理論はおろか、特にはコメントさえ寄せなかった。しかしながら、マルクス...