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「マーティン・チャズルウィット」から、トムがルースに話して聞かせたこと

 チャールズ・ディケンズの長編「マーティン・チャズルウィット」を読んだ。  第50章になかなか良いセリフがあったんだけど、訳があまりに読みにくかったから、ここだけ自分で頑張って訳してみた。  * * * * *  「妹よ、」トムは言った、「ぼくは君の愛情に正直に応じるよ、本当に正直にね。それは悲しいことだ。それが時々ぼくにとって悲しいことだと分かってた。まあ、ぼくはいつもそれと戦ってきたんだけどね。けど君の大切な誰かが死んだら、君は夢の中で魂になって天国に行くかもしれない。そしてこの地上で目を覚まして悲しくなるかもしれないね、まあ別に、眠りに落ちるより生まれ落ちることの方がつらいってわけでもないんだけどね。ぼくにとって悲しいのは、自分の夢についてよく考えることなんだ、だっていつも夢だと分かってたんだから、初めてその夢を見た時でさえそうだった。けど、ぼくにとって現実ってのは非難すべきものじゃないんだ。現実は現実なのさ。妹よ、ぼくの可愛い話し相手よ、君はここをとても素敵な場所にしてくれてるね、ルース、もしこの見方にぼくが悩んでなかったとしたら、ぼくに注いでくれる君の愛情が実際よりも減ったりするのかな? ぼくの旧友であるジョン、彼はぼくを冷たく扱ったり無視したりするなんて簡単だと思うんだけど、彼のぼくに対する親愛の情は減るのかな? ぼくを取り巻いてるこの世界の良さは損なわれてしまうのかな? ぼくの行く手に素敵で美しい女性が現れて、他の素敵で美しい女性と同じように、ぼくをより幸せにより良くしてくれるのにもかかわらず……まあ、彼女を自分のものと呼べないなんていう自己中心的な悔しさは例外としても……ぼくの言葉がきつくなり、顔つきが不機嫌に、心が冷たくなることがあるのだろうか! いいや、かわいい妹よ、そんなことはないよ、」トムは言った、きっぱりと。「自分にとって幸せって何なんだろうと思い返してみると、ぼくはあえてこのひっそりと佇む何かを悲しみと呼ぼうとは思えない、それに値すると思われるどんなちゃんとした名前でも、ぼくは天に感謝するよ。だってぼくを愛や優しさに対して敏感にして、色んなやり方でぼくを穏やかにしてくれるんだからね。幸せは減らない、絶対に減らないんだよ、ルース!」 "My dear," said Tom, "I will